大川組子
陽光と匠の技が織りなす光と影の絶妙なハーモニーは、無限の空間を創る
季節の移ろいを室内の床や壁や天井に写しだす光のメッセージ。
その言葉を読み取った先人達が築いてきたのは、光と影のデザインだったのかもしれない。
その景色から季節の気配を楽しむ粋な文化を磨いてきた。
福岡県知事指定特産工芸品[昭和62年度指定]
現存する最古の建築で、飛鳥時代を代表する建物である法隆寺金堂は、その高欄に卍崩しの組子を配している。従って組子は、この頃中国から社寺仏閣の建物 の一部として、日本に伝わったとされている。縦挽(たてび)き鋸(のこぎり)「大鋸(おが)」が15世紀に出現、台鉋(だいがんな)が日本に伝わったのが 17世紀頃で、今日の引く形になったのは18世紀と思われる。従って今日のような繊細な組子はその頃から発達したものと思われる。大川組子は約300年の 歴史を誇り、200以上もある伝統的な組方は、より繊細なものとして今日に伝承されている。大鋸や台鉋が出現したときのように、木工機械の発達は1mm以 下の組手(くで)を削り出し、組子細工の頂点を極めた。
大川組子の制作の流れ
- 1.材の仕込み
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材は最低でも5年は乾燥させている。約2mmから薄いものは1mm以下に挽き割り厚みを調整する。厚さの調整はミクロンの世界。
- 2.材選別
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ヒノキを中心として、杉、ヒバ、ホウノ木、神代杉、神代楡等を使用。同材でも微妙に色が異なるために色を選別する。材は堅すぎても柔らかくてもいけない。
- 3.組手切(くでぎり)地組み
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縦横を0.001mmの精度で割込みを計算し割りつけ、組手切(くでぎり)する。割込みは最終的に職人の勘である。三組手(みつくで)で組まれる地組みが組子の基本である。
- 4.意匠と下書
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200以上ある伝統的組方を付け子に納められた地組みの中に、バランスをみながら配置する。組子職人の技術と意匠の調和が試される。
- 5.刻み
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鉋や罫引そして鋸で挽いて組木(組子の中に納まる部品)を作る。紙一枚の世界を職人の勘と道具で削る。道具の仕立ての良し悪しが、仕上がりに大きく影響する。
- 6.組木の組立て
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細かい組木の組立ては、組木の固さのバラツキを確認しながら組上げて行く。地組みにすっと納まるように。同じ寸法で作っても固さが異なると納まりがつかない。
- 7.組木の色々
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200以上ある伝統的組方のための組木作りには、繊細な仕事ばかりである。紙一枚のミクロンの世界を職人の勘で作り出していく。基本の角度は60度。
- 8.組上げ
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細かいところから組み立てて、多い時は数万個の部品で組込む。見た目は華奢でも一分の隙間も無い組子は、一枚の板のようにしっかりとする。
- 9.仕込み
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建具の中への組子を納める。鉋で仕上た組子にはホコリが付き難いが、繊細な組子の美しさを維持するために両面をガラスに組込む場合もある。