大川彫刻
壮大な地球のエネルギーをした木々と語り、自然の形を写す
優しい年輪模様、色彩、手ざわりなど、
めぐる季節の情緒を宿した木々の風合いを読み取り、日々、心と技を磨き続ける。
素朴な自然の形を写し、今様の豊かな感性で、欄間・彫刻を意匠する大川欄間・彫刻職人。
福岡県知事指定特産工芸品[昭和61年度指定]
約470年前の室町時代、榎津久米之介によって始まるとされている大川木工の歴史。時同じ室町時代に、全国で社殿や寺院の柱・欄間などに塗装を施す建築彫刻が急速に発達する。
大川彫刻の欄間彫刻は、立花藩の立川流の流れをくむ村石繁太郎(天保3年生)に始まると言われ、主に社寺彫刻で業をなしていた。
昭和に入り木造住宅の茶の間、客間等の鴨居の上に、採光と換気・通風を良くする実用性と、建築の品格を高める装飾性を兼ねて取り付けられてきた室内彫刻欄 間へと移り変わる。昭和初期の美術欄間彫刻専門彫刻師の名刺が現存することから、この時期社寺彫刻から欄間彫刻への移行が伺える。
大川彫刻制作の流れ
- 1.材管理
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木が素直に乾燥し桟木の色が材に移らないように、桟木の位置を変え板を裏返し積み替える。3年から5年木を見てその変化から木の素性を読み取る。
- 2.構想
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職人は彫りの技術は習うが絵を習う機会は少ない。しかし彫刻は自然の観察力とデッサン力が要求される。日々の写生は欠かせない。
- 3.木取り
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木目の良し悪しを決めるのはこの木取りにある。木目を見定めて木取りを決めて墨付けを行う。
- 4.下絵書き
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下絵は平面だが彫刻は立体、見る角度から重要なところを見極めながら書いて行く。荒取りするたびに墨を入れて行かなければならない。
- 5.挽廻し
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長い欄間は糸鋸の刃が回らないと挽けない。きれいな仕上がりには細めの糸鋸を使う。厚い板は刃が倒れて木口が斜めにならないようにアサリ歯を使う。
- 6.研ぎ
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砥石(といし)にはそれぞれ刃物の指定席がある。多くの刃物のために沢山の砥石が。使われて薄くなって無くなる、形が変る。砥石も手入れが必要。
- 7.荒彫り
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鑿(のみ)で大まかな形に彫り上げる。堅木で自作し手に馴染んだ握木槌(にぎりこづち)は、微妙な力加減が鑿に伝わりやすい。鑿痕(のみあと)が微妙に美しい形をしている。握木槌の鑿を叩く音の強弱が心地よかった。
- 8.彫り
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十分手入れされた突き鑿が、一刀一刀木目に逆らわず的確に美しい形を削り出す。その鑿音もサクサクと心地よい音を立てる。
- 9.塗り
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モノによっては塗りを施すこともある。漆やカシューを布につけて摺込み拭取る作業を5回重ねる。薄くて回数が多いほど木地の美しさが増してくる。