掛川(かけがわ)織の紹介
いつの世も日本の暮らしを奏でてきた自然の職人
日本の自然を織り続け、ゆずり継がれ、磨かれてきた掛川織。
妥協を許さない職人の熱いこころは、洋風化するライフスタイルの中に、
新鮮な風を送り続けています。明日の暮らしを奏でる掛川職人。
福岡県知事指定特産工芸品[昭和54年度指定]
藺草(いぐさ)栽培は稲と共に最も古い作物とされている。福岡県内の弥生時代の遺跡からタタミ表状蓆(むしろ)が出土しており、藺延織(いえんおり)は 既にこの時期に高い水準であったことがわかる。この地に古くから藺草が栽培され蓆を織っていたことが「延喜式二四」(912年)に、筑前・筑後国から大宰 府に蓆を納めたと記されている。
掛川は筑後花茣蓙(ななござ)の代表的なもので他県産地には見ることができない。しかしその期限を知る資料は少なく、享保12年(1727年)久留米藩 が畳表の定値段を決めた中に、掛川と思われるものを始めて見ることができる。また、鳥井清長の浮世絵「楼上夏宵」に掛川が描かれている。
掛川織の制作の流れ
- 1.藺草の栽培
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藺草(いぐさ)の栽培は、寒い冬に水田に苗を植えて暑い夏に刈り取る。厳しい作業と多くの手間を要する。
- 2.藺草のチェック
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藺草製品の中で一番上質の藺草を必要とする掛川のために、入念に藺草を選別する。藺草の長さは主に130cm以上の中太で径が揃ったものが選ばれる。
- 3.デザイン
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長年の経験で色彩のバランスを考慮し、新しく染めた藺草を選んで構成する。頭に描かれたものを実際に少量ずつ織り、その中から今年の柄を決める。
- 4.染め
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染めは温度と時間タイミングを計って水を差し染まりやすくする。藺草は育った田によって染め具合が変る。藺草がムラ無く染まるように長い藺草を一本一本慎重にほぐす。
- 5.長さ色ムラ折れのチェック
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長さが足りない藺草、折れた藺草、色の調子が揃っていない藺草を抜き出す。微妙に色違いが織りに影響する。織り傷を出さないために。
- 6.織り
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掛川織りは筑後地方独特の織りで花茣蓙の逸品である。綿糸は藺草の抵抗が大きく折り難いが、自然の藺草には天然素材を使わなければならない。
- 7.天日干し
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織り前にとった藺草のくせ直しをする、加湿(かし)の水分を飛ばすために、裏側を天日干しをする。掛川は1時間ほどで十分乾燥する。
- 8.長さ揃え
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経糸(たていと)だけを切るように両刃の刃物で、サイズに合わせて長さを切揃え経糸で綴じる。
- 9.仕上げ
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掛川の表面をヘチマでこすり、余分な染料を拭取り藺草に艶を出す。目に見えなかった藺草の折れの織り傷を、一目一目確認し手直しをする。